ケニア人の作業姿勢
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◆Nさんの嘔吐下痢
葛根湯でも過敏症状を現すN婦人とはもう15年以上のおつき合い。
小心で病気恐怖症が強く、パニックに陥りやすい方。
咽頭喉頭が弱く、風邪をひくとすぐ声がれし、咳の頻発で難儀する。01/11/26参照
そのNさん、今日は昨夜来の嘔吐下痢を訴える。
昨夜半、急に吐き気がし大量に3度ほど嘔吐する、前後して下痢も数回あり、熱発なし、下腹痛なし、吐いた時に胃のあたりに少しだけさし込むような痛みがあったが続かない。
夜半中不安で救急車を呼びたいほどであった(一人暮らしだが、娘夫婦が隣に暮らしている)。
朝一番でかかりつけの内科医を受診、その頃には軽い吐き気だけで嘔吐下痢症状なし。熱発もないが、お腹にくるカゼでしょう、とのことで吐き気止めを処方される。
その足で当院に来院される。舌は正常、腹部触診でも腸管の過敏状態はさほどない。熱もない。
昨日は「何を食べた、何かかわった物を食べなかったか」としつこく聞くが、「思い当たることはない」との返事。「Nさん、これはどう考えてもカゼの胃腸炎じゃないよ。第一わずか半日ほどでこんなにケロッとしているのは不自然だよ。絶対に何か変わった物を食べたのじゃないかね。これは一種の食傷みたいなものだよ。」と再度問いただす。
すると、「一昨日から、頂き物の好物のタケノコを結構な量食べた。昨夜は、茄子1本分を油炒めで食べた。」とのこと。
・タケノコは食物繊維が多く、胃に負担が大きい。
・ナス科の植物はアクが強い(ジャガイモの芽にも含まれるアルカロイドであるソラニン)。
・夏野菜は体を冷やす作用があるが、ナス科、ウリ科の食物はとくに体を冷やす。
・ナスの実の部分はスポンジ状で油を大量に含むことができる。
タケノコを多く食べて胃腸に負担がかかっていたところに、アク抜きが不十分だったか、油の量が多かったかの茄子を1本分も食べたことで、胃腸管が治癒反応的に食べたものを受け付けず嘔吐し下したのではないか。
吐くべきして吐き、下すべきして下している時に、「吐き気止め」はないでしょう。
せめて、健胃薬と整腸剤にして欲しいものです。
◆介護家族の「介護」の大切さ Tさんの例
T婦人は65歳、慢性腰痛、頸部痛・肩こり・頭痛で月に数回来院される。
数年前から実母94歳を自宅で介護している。頭はしっかりしており、内臓も丈夫、ただ足腰が萎えておりほとんど寝たきり。食事と排泄は自力ではできない。
頭がしっかりしていて姑でない分、お互いにわがままが出やすいのか、憎たれ口ばかりたたき、しょっちゅう喧嘩みたいになる。早く死にたいが口癖だが、結構しっかりと食べて元気。夜数回オムツ換えで起こされる。
介護家族の大変さは、疲労それも寝不足からくる慢性的な心身疲労が主愁訴となり、持病のような腰痛肩こりなどは背景に隠されることが多い。
ご本人の自覚は、どこがどうあるというより、とにかく「眠いし、くたびれる」と表現されることが多い。
訴えとしては背景に隠れるような、肩こり、背部のこり、腰痛について丁寧に聞き出し、探り、それを和らげるような治療に努める。もちろん、不眠への対処としての後頭部や上項への治療も欠かさない。
このような場合は、ベットの空き加減次第だが少し余分に「寝かせて」あげる。これも治療のうち。たいていはヨダレをたらすほどに眠ってしまう。
頸部や背部の治療が重なってくると、同じように夜中に起こされてもまたすぐに眠れて眠りが深くなり、疲労感が薄れてくる。身体的耐久性が増して疲労感が薄れてくると共に、心にも余裕が少しずつ見られるようになる。
全面に現れている訴えが「心の疲労」と考えられる場合でも、例えばカウンセリングのような臨床心理的なアプローチが無効だとは思わないが、「身体の疲労」を改善してゆくことで「心の疲労」も改善されると考えている。
そして、身体の疲労と心の疲労の架け橋になっているのが「睡眠の質」ではないかとも考えている。
◆腰の捻れ曲がりのHさん
70歳のご婦人Tさんは、今時少なくなった腰曲がりである。昔は農夫病とも言われた腰曲がりは、屈む姿勢を長時間
する農作業が長年にわたって負荷されてきたことのツケである。近頃は農家でも機械化が進み、屈み姿勢作業が少なくなったせいもあり、腰曲がりの人を見るこ
とは少なくなった。そう言えば、同じように膝の変形が強い人も少なくなった。
Hさんは腰痛、膝痛、肩痛の訴えで来院された。腰は曲がるだけではな
く捻れており、歩容は肩を揺すって相撲取り風である。腰痛の具合を具体的に問診していくと、訴え方の程度と実際の生活動作の障害度の間にズレがある。何度
も何度も確認するが、痛いという割には炊事洗濯(まだ現役の主婦である)の困難は少なく、1年ほど前から始めたプールでの水中歩行の効果だと自分で言うほ
どに歩行は最近楽になったとのこと。
では何で腰が痛いと訴えて来院されたのか。
腰曲がりも捻れも、見かけほどは痛みは少ないものである。ただ、姿勢や動作の耐久性に欠けて、同一動作の連続や姿勢の保持には難儀することが多い。
H
さんは、農家にお嫁にきて初めて農作業を精一杯やった。お姑さんは厳しい人だった。夫が庭石の売買を始めたとき、Tさんがトラックの運転免許を取って石の
運び出しに精を出した。ご近所の人によると、誰もが「Hさんは若い頃から、皆が感心するほどよう働いた」という(ご近所さん数名の紹介であった)。
訴
えの程度と実際の生活動作の障害度の間にズレがあることをしつこく聞いていたときには、少し険しかった表情が、「若い時の労働の厳しさのツケ、勲章です、
恩給なんですよ、この腰は」みたいに話しかけると、とたんに柔和になる。なるほど、わかって欲しいのだ、この腰の由来を。
人は、病や障害の加害責任がはっきりしている、と感じているとき、それが悔やみや憎しみや嘆きのようなマイナス感情につながると、病状は固定し増悪し、理屈に合わないような矛盾した状態を呈することがあるように思う。
H
さんの場合、若いときの労働の厳しさに耐えて家業を支えたことはもちろん誇りである、けれど「こんな腰に誰がした」という負の気持ちもゼロではないのだと
思う。若いときの苦労が、ありがたくはないけれど「勲章、恩給」じゃないかと、少しでも正の方向に昇華されれば、正味の病状に向き合えるように思う。
事故の場合の昇華の方向性は、もちろん「命があってよかった、これ位でよかった」であるが、加害責任が明確なほど恨みの感情が諦められることは難しい。
Hさんに、この腰の捻り曲がりの変形は、「疲労」を来しやすい条件の一つであり、現在訴えている腰痛の直接の原因ではないこと、大事に上手に身体を使い、より疲れにくい足腰を造れば、あと20年は大丈夫じゃないか、と説明する。
Hさんは、こんな説明は聞いたことがない、変形=腰脚痛とされてきたと少し納得した模様。
現在、今のところ満足気で週2回の「メンテナンス」に通院中である。
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◆筋肉の5月病
正確な統計などでなく印象としての話。
春先5月と秋口10月頃には、寝違いあるいは筋違いに類する筋肉の変調症状が多く出現する。
これを私は、筋肉の5月病と呼んだりする。
寝違いを中国では落枕(らくちん)と言うらしいのだが、まさに枕を外してしまい首筋を痛める寝違いの様子を言い得ているようだ。
先週来院された患者さん、Aさん[年に数回、主に首の痛みで来院、首の筋違い様の痛み]、Yさん[週1回健康管理的に来院されている、肩胛骨の間の筋違い]、Hさん[初めての鍼治療、腰の筋の痛み]、Sさん[週1回、65歳にして更年期障害様の症状で来院、腰の筋の痛み]、Tさん[めまいで週1回来院、肩と首の筋の痛み]、などなど連続して「5月病」の患者さんがあった。
今年は例年より10日以上も季節進行が早く、はや「5月病」の出現となっているような感じ。
筋肉の5月病=筋違いは、陽明あるいは厥陰と呼ばれている陰陽二相(つまり冬夏の)の転換期の後半によく見られる症状で、筋肉の中の微細循環が何ら
かの不安定な状態となった時期に、冷たい風にさらされたり、不自然な姿勢や動作で筋が伸ばされたりした時に、筋肉の繊維の鎖のような連鎖がある種「絡まっ
た」状態となって生じる、と考えてみる。
絡みついた筋を無理矢理に伸ばそうとすると、痛みを生じ、その痛みのため筋肉はまたもや不自然に収縮してもっと絡まってしまい、ついには「ひん曲がった首や腰」を演出してしまう。
こ
の理屈は、ふくらはぎの痙攣で無理矢理に筋を伸ばすと強い痛みが残るのに似ているが、首や腰の筋肉は、筋肉の中でも特殊な役割と機能を持っているためか、
ふくらはぎの筋肉の場合は筋肉痛様の痛みが残るだけなのが、首や腰の筋肉は姿勢反射が強力に働いて姿勢を維持しようとする自律的な働きと、痛みを回避しよ
うとする意志的な働きのジレンマに陥って、ついには「ひん曲がった首や腰」を演出してしまうのではないだろうか。
寝違いでも強度になると、背骨の関節の捻挫様の状態にもなるし、1週間10日でも改善しないこともある。
とにかく、痛みと痛みを回避しようとする働きがこんがらがると、強度の筋違い現象が現れる。
普通は、1週間もほっとけばそのまま自然にでも回復するが、それでも直らない「悪循環」の要素があると、かなり痛い思いをすることになる。
陽明や厥陰の後半になぜこのような筋肉の病態が生じやすいのかは、筋肉の中の微細循環が季節変動で何らかの不安定な状態となった、という位の仮説で考えている。
◆脊柱管狭窄症で馬尾神経痛が強いOさん
いよいよ末期的な痛みと痺れ症状で眠れぬ夜が続く。無力であるけれど、不安にどう立ち向かうか、受け入れるか、その一点に的を絞っての治療が続く。
標準体重をかなりオーバーしているので、かかりつけの外科医(内臓外科)は、手術を勧めない。私は、やってみる価値はある、手術後もシニアカーを使う、ということで何とか生活はできると説得するが、これでは普通の話とはあべこべである。
シニアカーは危険である、あんなもので公道を走るのは迷惑、などなど本人の生活の幅を狭めるような周りの無責任な発言に、当人も怖じ気づく。
80歳にして電動車椅子で天神まででも出かけ、社交ダンスにうつつを抜かす猛者Yさんを見習え、との声もなかなか届かない。
今度の日曜日に、近くの中古シニアカー売り場に連れ出したいと思っているが・・・・・・
どんな場合でも、どんなに制限されているケースでも、それなりの快適さを得ることはできるはずで、その状態が痛くて不満足であっても「それなりに」生きていけるのだから、それ以上の不安を妄想する必要はないのだが、不安にさいなまれる。
「いざり」になっても「いざれば」いいのではないか。と、夫君もはげますし、私もそう思うけれど。
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◆先週のこの冬一番の冷え込みで腰痛坐骨神経痛が悪化したようです。
先週前半の冷え込みはこの冬一番だったようで、「ガラスの腰」の持ち主Yさんなどは、腰も下肢もとても痛んだようです。
太ももやスネが痛む坐骨神経痛の場合、実際に神経障害のある場所は腰部です。
普通の整形外科的な説明では、脚を冷やすとなぜ神経痛が増悪するのか理屈がつきにくいようです。
でも、事実として、下肢を冷やすと神経痛は悪化しますし、お風呂で暖めた後にはしばらく神経痛は増強します。
ディスクワークが主のYさんなどは、冷える時期にはアルミホイルでコートした段ボールを靴の下に敷く、靴の中敷きにもアルミコートされたものを使う、靴下の中に唐辛子を入れる、レッグウォーマーなどを使用する、などなどの足脚の冷えを防止する方策をいろいろと工夫することが大切。
ツボでは、ふくらはぎの少し外側にある「飛陽」というツボがとても効果的。
◆お腹にくる風邪の手当について。
急性胃腸炎を伴うウイルス性の風邪は主に小腸を傷害するようです。
下痢や嘔吐で腸管内の内容物を排除し、胃痛や吐き気で飲食を妨害することは、胃や腸管内を空っぽにして安静をとるという目的にかなった身体の自然な振る舞いだといえます。
身体壮健で胃腸が丈夫なMさんは、そんな胃腸からの異常信号に気づくのが遅かったようで、朝食・昼食ともに普通に食べた後で気分が悪くなったとのことで来院された(前週には鼻風邪の様相だった)。
聞くと、朝と昼に普通以上に大量の排便があったとのこと。お腹はペコンと凹み、腸管の動きが鈍く、吐き気あり。血圧は低下傾向で顔面蒼白で冷や汗あり。舌は白い苔に覆われ、口臭あり。微熱。昼食から三時間ほど経過している。
便は出きっているとしても、昼食の内容物がまだ胃に残っている。嘔吐を促す推吐法によって胃の内容物を出しきることが必要。
「中かん」のツボに鍼をして五分とたたぬ内に大量に嘔吐。これだけで気分良好となり血の気が谿う手のツボと脾兪に鍼をする。
何も食べずに寝ること。明日もお粥ていどの食事だけにしておけば大丈夫。
翌日午後来院されたときには、お腹がすいている以外は問題ない、とのこと。熱発は七度前後あったとのこと。
「二三日絶食して痩せませんか」とからかったが、Mさんほど胃腸が壮健でない人ならば、おそらく朝食後には胃痛があったりしていたはずで、その時点で異常に気づいていたであろう。
普段丈夫すぎると、実際の病状の進行と症状の自覚に時間差が大きく出てしまうことがある。
小腸の傷害につける薬はなくて、安静が一番、つまり食べないこと。固形物はもちろん液体でも胃に入ると反射的に腸が動き出して、しばらくはお腹が痛む(疝痛)。これは、「静かに大人しくしてくれ」と腸が悲鳴を上げているのだと考えてよい。
◆「のぼせ」からくる頭痛や肩こりについて。
人間関係や行事などでトラブルめいてくると、とたんに血圧が上がり頭痛がし肩がこってくるご婦人Tさん。
更年期はとうに過ぎているが、いわゆる「のぼせ」症と考えてよい。
「のぼせ」症には、顔面頭部に上気症状(熱感・汗・重感など)と手足の冷えがセットになってくる場合が多くある。
これは、イメージ的には身体上下の熱の配分バランスが狂っている状態と考えることができて、単純に下に熱を誘導して引いてやればよいことが多い。
自分で簡単にできる方法は、足湯(バケツにやや熱目のお湯を入れて足を浸ける)や半身浴、「気」を手足から散ずるための体操-つまり散歩、そして、「合谷」の指圧、などがとても効果的である。
直後から頭がス~ッとして落ち着いてくること請け合いである。
もちろん、鍼治療の方がもっと効くけれど!
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◆就寝後しばらくすると咳がでて、それが数時間続いて熟睡できないという△さん。
呼吸器病で定評のあるM病院での診察では呼吸器には問題なく、臥位で食道から胃酸が逆流してのどを刺激しているのではないか、とのことで制酸・健胃薬を投与されるが、約1週間の内服でも症状は軽減しない。
鍼灸治療としては、のどや気管粘膜に「潤い」が得られることを期待して、首や胸や腕にツボをとるけれど、これらでうまく行かぬ時の最後の手段として「米山流」の咽喉刺という手技が効を奏することが少なくない。
この△さん、咽喉刺の直後から咳は減少し、同夜にはほとんど咳は半減、翌日にはほぼ止まり、3日後の来院時にはほぼ平常に戻る(つまり、平常時でも「カラ咳」を時々する)。
咽喉刺は「秘伝」みたいなもので、誰にでもできる・誰にもするわけには行かない。
咽喉刺は、「咳止め」ではなくのどの粘膜を正常化する働きがあるのではないかと考えている。だから、痰の出ない過敏症状としての咳には「鎮静・鎮咳」の、炎症によるのど痛と痰と咳には「消炎・鎮痛・去痰」の効果が期待できる、と考えている。
普通感冒後に気道感染症の症状がほとんどないのに夜間就寝後しばらくすると出てくるしつこい咳や、風邪とは関係なく年中ちょっとした刺激で誘発される場合の咳などは、のど粘膜の「痒み」で咳反射が高進した状態ではないか。
感染性の炎症はなくなってものどの粘膜に何らかの「荒れた」状態が残っているのかも知れないし、のどの粘膜が痒くなりやすい「乾燥症」なのかもしれない。とにかく「のどの粘膜の過敏症」と考えると解りやすいのではないか。
話としては、耳をいじると咳が誘発される人たちがいて、このような人は、のどの粘膜の神経と外耳道のそれとが繋がっているのではないかと推測された
りする(胎生初期にはのどと外耳道とはエラ組織の一部として隣接しているそうだ)。Tさんは典型的なこのタイプの人で、年中カラ咳を頻発していて、時に
(カゼの後などとは限らず)それは発作といえるほどの苦しげな症状を呈されていた。
△さんの経過は良いが、あまり痰も出ず、熱発などもない、得体の知れない、あるいはどこにでもいるような病原体による日和見感染の疑いも頭の隅に置いておくこと(異型性の気管支炎や肺炎には特効的な抗生剤がある)。
◆短めの首の人は、首の仰向け動作に要注意! ×さんの場合。
首の短い「猪首」の方は、首の後屈(後ろに曲げる)動作や作業などによって、頸部神経障害が引き起こされる危険性が大きい。
一般的に頸部の後屈姿勢は、頸部脊髄や神経根に対する圧迫牽引の力がかかりやすいと言われている。特に首が短めの「猪首体型」の人では、この傾向がより強く、中高年の男性では首を後屈した姿勢での作業後に神経障害-神経痛やシビレ-が起こることがよくある。
×
さんは、60台半ばの男性、首が短い。農作業用トラクターの車体底部をのぞき込むような姿勢での短時間の作業後に頸部から腕にかけての神経痛様の疼き痛み
発症。夜も首と腕の疼きのために眠りづらい。シビレ感と軽い知覚障害も手の甲から前腕に認められる。力はほんとんど正常。頸椎症や頸椎ヘルニアによる頸神
経痛とされるような例。
このような体型の人は、「うがい」や首の体操のような姿勢動作でさえ頸神経を傷めることがある。大工、植木屋、塗装業などの職人さんは、上を向いて首を後ろに曲げた姿勢が続くような作業はとても危険である。
×さんは、神経障害も軽く、順調に回復すれば2~3週間で疼き痛みは軽快するだろう。シビレ感の回復はもう少し日数を要するだろうが。
この頸腕神経痛の例でも、疼き痛む腕部を「冷やし」、頸部鎖骨下部を「暖める」ようにアドバイスしたところ、発作状態の疼きが速やかに消退したとのこと。
◆長年の課題の自発痛の成立と治療について貴重な体験をさせてもらっている○さん。
特定処置中(腎透析)に出現・増悪する肩首痛と肩関節部の腫脹について。
週2~3回の治療を2週続けた後、肩関節の前方部の水腫様の腫脹は、まず内容物が半減し、次いで包状組織も膨れた状態から縮んで正常状態に近くまで波を現している。仰臥位でしばらくすると同部に自発痛が出現する。これは、座位をとるとしばらくして改善消失する。
姿勢も大きな要素であるらしく、仮説「還流障害で微細局所の組織内圧が高まった結果の発痛とその消退」は、「肩周囲の包状組織の一部が何らかの理由(姿勢など)で窮屈になる」ことが最初の引き金となる、を付け加えるべきかも知れない。
また、身体全体の水分貯留・むくみなど「組織内の水圧の高進」も誘発要因となっているかも知れない。
養生法「流れ込む側を冷やす・流れ出る側を暖める」に加えて、何らかの方法で「腕を釣る」ようにして肩関節周囲をできるだけ自然にルーズにすることも重要である。
これは、五十肩の自発痛が相当に強く難儀した宗教家の×さんが、「疼きは風呂に浸かると、ただちにウソのようになくなる」と言い、三角巾で腕を釣っていたことや、プール入水中に同様の現象が認められることなどからも推測されること。
比較的相対的に閉じられた微細な組織間隙が生じ、その空間で流入量が流出量を上回るような状況となったとき、内圧の高進が「疼き」を生ぜしめるのではないか。
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◆11年来、喘息と馬尾神経痛(主に臀部の痛み)で診ている○さん。
MRIの所見を7年前と比較すると脊柱管の狭窄がひどくなっている、とのM先生の診断。
骨そしょう症の薬物・食事治療を行ってきたわけでもないけれど、骨の密度は7年前よりも10%は改善している。
◆びっくりするほど背骨が左に側彎した×氏。 まだまだ側彎は残ってるものの日常生活上の障害は軽減しつつある。しかし、なかなかひどい側彎だ。
◆プール鼻炎の女性。 クイックターンの練習をすると、鼻に大量の水が入ってしまいやすく、ひどいときはその場で頭痛すらしてくる。 だから私はクイックターンなんぞしない(春先などはそうでなくともスイミングの翌日の午前中はズルズルの鼻炎状態でひどいときには熱感すらするものだ)。 水泳後に鼻の粘膜を微温塩水で「鼻うがい」などをしておけば、翌日の鼻炎症状は軽くなるが、なかなか面倒でしない。 一種の刺激性カタル性鼻炎で、アレルギー性鼻炎とほとんど同様な鼻粘膜の病態だろう。 この女性、スイミングの上達が著しいプール同級生。 メキメキと上達するものだから何でもチャレンジされて、それでクイックターン。 水泳後当日翌日の鼻炎状態は中程度と評価できるが、やはり午前中はかなり酷いらしい。 合谷(親指の又の部位)、印堂(眉間にある)、それと耳鍼ツボ(対耳珠のふもとあたりの部位)への皮内針で4日ほどは症状が改善する。 しかし、はやくクイックターンをマスターして鼻に水が入らぬようにしないと。
◆イアン・ソープにあこがれる水泳選手△君。 ソープの泳ぎの水中ビデオを見てキックのしなやかさの大切さを痛感している。 足首の柔らかさは、ふくらはぎ(そして脛)の筋肉の硬さ・緊張度に依存する。 小生は昨年の腰痛坐骨神経痛(中位のヘルニア持ちなので)以来、ふくらはぎの握圧法を編み出し実践しているため足首の柔軟度が高い。おかげで、ビート板キック25メートルでは最初の一本だけなら!選手コースの中くらいのタイム18秒が出せるまでになった。 自分自身でスポーツを継続的にやるようになって、運動は「しなり」だという実感を持つようになってきた。 筋力パワー、瞬発力、スタミナがスポーツの基礎三要素だろうが、違った見方をすれば「しなり」こそが最も大切ではないか。 水泳で言えば、キック力は足首を中心とした脚の「しなり」、プル力(手のかき)は手首を中心とした腕の「しなり」、そしてスイム(コンビ)は、上肢と下肢の「しなり」が腰を中心とした胴体の「しなり」でコンビネーションされて実現されるのだと思う。 プル力の強化は、手首を中心とした腕の「しなり」を強化することにあり、前腕の内側と上腕の後ろ側の鍼と握圧法とストレッチでそこの支持系筋群を柔らかくすることが第一歩だ。 あと一年、関門海峡は越えられるか!
◆脳疲労の警告信号と回復する睡眠 睡眠の時間ではなく、睡眠の質が問題である。 中高年の特に男性のめまいや耳の問題は、とにかく脳疲労を回復するような良質な睡眠をたっぷりととることだと考えている。 天柱から完骨というツボの領域(後頭部「ぼんのくぼ」から耳の後ろの骨の高まりの際)に緊張・しこり・圧痛・違和感などを脳疲労の警告症状部位としてとらえることができる。
※「脳疲労」という言い方は、九州大学の藤野先生の用語。
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◆びっくりするほど背骨が左に側彎した×氏。 これほど見事な疼痛性側彎の方は久しぶり。C病院のMRIでも特に問題がないと言われ、ここ一ケ月も体がひん曲がって家でも職場でも大うけしていると苦笑されているが、触診で腰椎三番目あたりを探ると背骨の左側縁に強い圧痛とわずかな変位があり、拳で狭い範囲の背骨を叩打すると飛び上がらんばかりの痛みがある。三番目の椎間の左側に何らかのトラブルがあるはずだけれど、なんでXPでもMRIでも解らんのだろう。良く聞くと触診らしい触診はなかったとのこと。 ごく一般的には、椎間板の右側にかかる圧力を回避する反射が左側彎だろうが、氏の場合は矛盾している。
◆11年来、喘息と馬尾神経痛(主に臀部の痛み)で診ている○さん。 脚の筋力がだいぶ低下している。特に太もも。間欠性跛行(一定の距離・時間歩く・立つと、歩行と起立に難儀し休息で回復するような状態)もここのところ少しずつ強くなっている。 これまでの10年あまりの間でも同様に症状が強くなった時期もあり、今回もそのような悪化の波の頂点とも思えるが(希望的観測or思いこみ)、M先生の所で6年ぶりにMRIを撮ってもらうことになる。
◆高校生の頃から診ている社会人3年生の△君。 下肢伸展挙上も30度で強陽性、しっかりと根性神経痛の様相が出ている。もうすぐ結婚するとのこと。しっかりと飛陽(ふくらはぎの中央外側で母趾側の神経症状が出る場合の特効穴)を揉むように。 神経痛の鍼灸治療の理屈は矛盾が大きいけれど、自分の体験からも、足首の関節の柔軟性にも関係するふくらはぎの深部の神経刺激点や筋肉の硬さを改善しておくことは腰痛養生の基本だと信じているのだが。 (私自身は、小趾側の神経症状に対応する外側のすねの附陽が「だる病み」に効果的だ。)
◆NHKの朝の番組で、膝痛を特集した公開放送の中で、レスラーみたいな立派な体格の理学療法師の先生が小生の「ふくらはぎ理論」もどき を紹介していた。思わずしっかりと見た。 「足首をくるぶしの上でしっかりと固定し、足首の関節を柔らかく数回ゆっくりと回す」と、膝痛の予防と治療に効果的との説明。 なかなかいい線を突いているけれど、ふくらはぎ深部の筋肉を支持系筋群として捉え、それと足首の関節の動的な柔軟性との関係、さらにそれが膝関節の動的安 定性に大きな役割を果たしていること、同深部筋群の握圧法を評価していないこと、などなどまだまだ足りないな、と思った。要は観察力と考える力じゃなかろ うか。
◆70歳にして四十肩に悩まされている○さん。 腋の下の後ろの壁を形づくっている筋肉や腱が硬く縮こまっている状態と捉えている四十肩は、上腕部の支持系筋である三頭筋(力こぶを作る筋肉の裏側)の握圧痛の改善が治療の目安だと考えている。 手首上の外関や内側のゲキ門、それと三頭筋そのものが握圧法の基本治療部位。それらの部位の自己マッサージあるいは握圧法がかなり効果的。ただ、これだけで効果的すぎると商売あがったりで困るけれど。
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