403 運動生理

2015年1月 9日 (金)

追跡 横隔膜・・・・・

横隔膜の事を熱心に語っていたせいか、我が心の音楽の師・太田先生が「POWERbreathe (パワーブリーズ) プラス スポーツ を紹介されている、と勘違いしているような。

箱鞴(はこふいご)の「ピストン」である横隔膜について、自身の喘息と関連しつつ、生物進化と呼吸との関連で調べつつ考えていたところ、太田先生は、実践をしなさい、と啓示してくれているようです。

一昨日は、「重積」一歩手前で救急を呼びそうでしたが、何とか持ちこたえ(鍼灸師ですから安易に「薬」には頼らぬ、のがポリシーですから。とは言い ながら窒息しそうでした。)、翌日、漢方T医師の示唆も受けて頓服のステロイドで一服しています(β2作動薬も抗コリン拡張剤も、「生理」を狂わせる悪薬 と思うので一切不使用)。

この器具のことよく知らないのですが、「上手な咳の仕方」を構想していたので、ピンときたのです。
口を詰め、声帯の少し下の気管に意識を当てて、ピストン=横隔膜を一気に押しだし、気管の襞にこびり付いた「痰」を咽の上まで跳ね上げる、上手な「咳」のシューマです。

多分、横隔膜大王の太田大師には、この意味不明な文面の意味を理解して頂けるでしょう。我が痰のコレクション、どうでしょう先生!「痰の研究(1)」

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2014年12月 4日 (木)

筋肉痛と鍼治療 (2006/07/07)

運動後の筋肉痛(遅発性筋肉痛)については、よほど痛みが強く長びかない限り治療の対象になることは少ない。 損傷した筋繊維の完全修復には3~4週を要するとされるが、これが鍼治療で短縮するのかどうか。

常連の運動選手や愛好家達は、試合の後やハードな練習後に来院するが、この時の治療は大抵はかなり強目のものとなっている。

このような 時、彼等は、筋肉痛というより「張り」や「こわばり」の改善を求めているが、この「張り」や「こわばり」の所在が深ければ深いほど、やはり鍼も深く刺すこ とになる。浅い「張り」や「こわばり」は、浅い鍼や遠隔刺激でも事足りる。これらの「張り」や「こわばり」が遅延性筋肉痛といえるかどうか微妙である。

これに対して、試合前とか調整期に訴えられる「張り」は、当然にして遅延性筋肉痛ではなく、文字通り筋肉の部分的な過緊張か、関節の動きが部分的に適合性を欠いた筋腱の動きの不調であったりするようだ。

試合前などに、むやみに筋緊張を弛めてしまうと場合によってはパフォーマンスが落ちるはずで、賢い選手達はTPOで治療する所を選んでいる。自分の筋肉や関節の状態と場面と治療家の得意技を勘案しているのであろう。
賢い治療家も、選手達の状態と場面に合わせて治療法を採用すれば良いはずだが、如何せん得意技がつい出てしまいがちとなる。場面に応じて治療を禁欲するのは難しいところがある。

閑話休題

筋肉痛の鍼治療の考え方としては、打撲や肉離れや捻挫などによる筋肉損傷と同じでよいだろう。

筋肉痛に対する鍼治療の効果は

  • 筋トーヌス調整神経系への干渉により筋緊張を弛める
    硬く痼った筋肉の収縮残留を解く
    → 筋内血管に対する外的抵抗の減弱 筋ポンプ作用の回復
  • 自律神経系の血管反射を介した血管拡張
    → 筋内血管を拡張させ筋内血行を改善して
  • 損傷組織の修復過程の促進

などによるものと考えられる。

ところで

下手なマッサージや指圧の後の「揉みこわり」
強い鍼刺激の後の「鍼ごわり」

などは一種の筋肉痛と考えられるが、その本態は「遅発性筋肉痛」と似たようなものなのだろうか?

そもそも「遅発性筋肉痛」の本態も、本当のところよく解っていない。
子供に筋肉痛は起こりにくいこと。
高齢者でも筋肉痛が起こりにくいこと。
これらの知見は「遅発性筋肉痛」の本態を示す重要なヒントのように思う。

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2014年12月 3日 (水)

歳をとると筋肉痛が遅れて起こるのはなぜ? (2006/07/06)

先日、ある会合で「年をとると筋肉痛が遅れて出てくるのは何故?」と質問され、「月と太陽と気象」をテーマにしていた話だったので少し困ってしまった。

会場にはボディビルダーをしている方などがいて、遅筋速筋がどうのこうのという話をされ、いろいろと話題が広がって面白かったが、「加齢によって筋肉痛=こわりの発現が遅れるとしたら、修復反応の加齢による遅延ということで説明がつくのではないか」ということでお茶を濁しておいた。

「歳をとると筋肉痛が遅れて起こる」というのは経験的によく言われている。
なぜそうなるのか「筋肉痛の加齢遅延説」について少し調べてみた。

いわゆる運動後の筋肉痛は、遅発性筋肉痛(DOMS=delayed onset muscle soreness)と呼ばれている。

本態あるいは病態

  • 遅発性筋肉痛の本態は、筋と結合組織の損傷後の炎症反応に伴う現象
  • 痛覚受容器は、筋線維そのものにはなく、筋膜に存在する
  • 筋線維の微細損傷の修復時にみられる炎症過程で発痛物質が発生し、これが筋膜を刺激して痛みが起こる
  • 筋肉組織からの逸脱酵素の一つであるCPKは、運動後3、4日目にピークに達する
  • CPKは、筋線維の傷害を反映している
  • CPKのピーク時点で、筋線維は壊死し、白血球の浸潤や腫脹などの炎症像が見られる
  • 筋繊維の再生には3、4週間かかる

原因となる運動

  • 筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する運動(伸張性運動)に伴って起こる
  • 筋長が最大限に伸びた時に伸張負荷が加わると、生じ易く、筋力低下、腫脹も顕著になる
  • 筋肉が短縮する動作のみ(短縮性運動)ではほとんど生じない

その他知見

  • 3~5歳の幼児期には筋肉痛が起こらない
  • 20歳と60歳の人に相対強度が同じ運動をさせて比較
  • 筋肉痛の発現までの時間や回復に要する時間に差がない
  • 筋肉痛の程度は高齢者で有意に軽度であった

歳をとると筋肉痛が遅れて起こるのはなぜか?( 筋肉痛の加齢遅延説 )

◆ 横浜市立大学・野坂和則  加齢遅延説そのものに疑問

  1. 年齢毎に相対強度が同じ伸張性運動を行わせて比較
  2. 若い頃は直後から筋痛を生じるような激しく強い運動をしがちであり、筋肉痛が早く出る感じ
  3. 歳をとると若い頃のような運動の仕方もなくなり、筋肉痛が(若い頃より)遅くなる感じ
  4. 筋肉痛は、運動の種類や強度による違いや個人差が大きい
  5. 要するに「歳をとると筋痛が遅れて生じるのは誤り」と結論

◆ 東京学芸大学・宮崎義憲  加齢遅延説をそのまま受け入れて

  筋肉痛が遅れて発生するのは、

  1. 加齢により血流が悪くなり、白血球の集まりが遅く 傷ついた筋線維を取り除くのが遅れ、発痛物質の発生も遅れ、痛みの発現も遅くなってしまう
  2. 筋線維の傷害後に現れる炎症反応が若い人では早く、年をとるとその反応が鈍くなることが原因の一つ

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2014年11月30日 (日)

神経の伝導速度とめまい (2003/03/23) 

 光(または電気) 300,000,000m/s

       音(大気中)         330m/s
       速い神経伝導        120m/s
       短距離走           10m/s
       遅い神経伝導        0.5m/s
       血流            数10cm/s
       リンパ流         もっと遅い

        生物の神経というケーブルを伝わる信号の実体は、活動電位(インパルス)の伝播であり、活動電位の実体は、イオン擾乱だという。神経中を伝わる信号の速 度は、電流の速度はおろか、音速にさえ及ばない。最高のスポーツ選手でさえ、その動作を制御するために四肢末端あるいは筋関節から送られてくる信号は常に 遅れて中枢(脊髄や脳)に達しているらしい。また、中枢での身体位置の解析や次のアクションを命令するための演算の速度も、現実の動きよりも遅れるとい う。我々の四肢体躯は、脳内にあると信じられている意志という命令に先行した何事かを目指して「勝手」に、そして全体として協調しながら動き、そして日々 その学習を重ねているようである。

 つまり、よく実感されているように、私の身体は必ずしも私の意志(自我の発露)の支配下にあるわけではない。私は、私の身体を支配し制御していると思い こんでいるのだが、それは錯覚にすぎない。体操選手のような、巧みな連続動作を意志的に作り出すことはできない。この当たり前の事実は、動作は意志によっ て成立しているという思いこみを粉砕する。意志による高位中枢を介した随意性ではなく、低位中枢を介した反射の連鎖による不随意的な適応なのだという説明 も、神経伝導速度と中枢の演算速度の限界の前では少し色褪せてくるように思われる。
      
 この辺りの事情を、随意性と不随意性、意志と自律性の問題一般に拡張して考えてみると、通説とは少し違った見方ができて、ある種の病気や病態の理解も拡張される。

 例えば、「めまい」あるいは眩暈発作後のめまい感を考えてみる。首座り、ハイハイ、お座り、つかまりだち、そして起立と歩行などの姿勢動作の獲得に費や される約1年、それから成人に達するまでの20年間に蓄積された姿勢制御の経歴が、ある時に突然に白紙に近い状態に戻されるとしよう。彼は、姿勢制御を実 現していた不随意系に信頼が置けない。彼は、不随意系に頼らずに、意志の力で随意的に姿勢を制御しようとする。けれど、如何せん、視覚や四肢からの信号を 中枢で情報処理し、その結果として四肢の位置を制御しようとしても、現実の進行に常に遅れてしまう。つまり、よろめいてしまう。彼は「めまい」の恐怖と不 安にかられ、一層に意志的に姿勢を制御しようとして失敗するというジレンマに陥ってしまう。

 めまい発作そのものと、その後に長く続くことが多くめまい発作をも誘発する「めまい感」を区別してこのように考えることもできる。キーワードとしては、余計な「はからい」の害とでも言うことができる。

 人を病者として呪縛してしまう病識の魔力は、「病は気から」の一つのバージョンである。

 運動系について東洋伝統的なとらえ方として経筋という括り方ができる。そこには、実に様々な手技手法が、そのすそ野を形づくっている。様々な武術がもっ ているワザも、当然のこととして攻撃的であると同時に治療的でもある。虫や鳥や獣の動作にヒントを得て、ワザや流儀が組み立てられるのもその自然観察眼の 故であろう。

 ところで、最も下等な脊椎動物である脊索動物にナメクジウオという魚類の祖先のような生き物がいる。まだ骨になりきれていない脊索を支柱として、ナメク ジウオはクネクネと胴体をくねらせて動きまわるらしい。このナメクジウオの動きの中に、経筋の始まりを観察してみることができないだろうか。
      
 ナメクジウオは容易には手に入らないから、より下等な部類から言えば、ヤツメウナギ、うなぎ、どじよう、ヘビなど、要するに鰭や四肢を持たぬかその働き が脆弱な動物の、脊椎を支点とした左右あるいは上下の鞭振運動を観察するのである。操体法の橋本敬三先生も、野口体操の野口三千三先生も、動物の動きや鞭 のしなりを観察し道を拓かれたのだという。テレビで見た野口氏の鞭のしなりヘビの動きの再現は面白かった。運動器の障害を動作全体の中で考えることの大切 さがある。

      

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