001 膝痛

2014年11月25日 (火)

支持系筋-ヒラメ筋 (2002/08/21) 

◆10数年前から膝痛と下腿内側のツボの関係について注目し、この部の①脛骨縁の奥と②膝の裏で、硬く触れる索条の硬くて強い握圧痛を示す筋と、膝蓋骨内外縁から裂隙にかけての傷害の関連性について考え続けてきた。膝痛と下腿筋群の関連性を考察した成書を探してみたが、未だお目にかかれていない。

◆このサイトにも「緩慢な捻挫」と題してこの間に考えてきたことをメモしている。
多軸多関節運動の動的調節機構理論という長ったらしいタイトルで、運動器傷害論の概念を掴んでいたつもりであった。
つい最近、整形外科医の井原秀俊という先生の『関節トレーニング』(協同医書出版社)という本を読んで驚いている。どちらかというと傷害の診方が構造・構築・形態の静的な側面にばかり囚われていると、私には思われる日本の通常の整形外科の流れからは少しはみ出した神経生理・運動生理の豊富な研究成果を踏まえたダイナミックな運動器傷害論と治療論=「神経運動器協調訓練」がそこにあった。

◆仙台の故橋本敬三先生は、ダイナミックな運動力学的発想によって養生・治療アプローチである操体法という運動・治療・訓練法を体系づけられた。操体法は、神経生理・運動生理の研究成果を基礎とした神経運動器強調訓練などとはひと味違った、総合の観察眼と真摯な実践の成果ともいうべき病理論・治療論と実践の体系であって、神経生理・運動生理の研究がこの体系を後付けできるのはまだまだ先のことになるだろう。

◆関節トレーニング・神経運動器協調訓練も操体法も共に優れた理論と実践の系を構築しているが、優劣ということではなくて両者の差を考えてみる。
この両者の間にある差は、医における観察の問題、より本質的には思想の問題にたどり着くように思われる。
過剰で些末とも言える思想・観念を抱えているのが「伝統医学」であり、思想や観念を極小化し、「実証」(という観念=客観性、科学的実証、そしてはやりのエビデンスである)に囚われているのが「近代医学」である。
思想や観念や哲学はいらない、という人々の脳みその奥には浅薄で幼稚な思想と観念と哲学があることは、ナチズムを呼び込む優生学や社会進化論の亜流に成り下がるであろう遺伝子科学技術の近未来型を想像するだけですぐに判ることである。
雄大で上等な生物学思想が、本当は必要なのではあるまいか。

◆関節トレーニング・神経運動器協調訓練も、全体性・総合性の発想から実証を定義し理論化している点で、単層的な機械論に陥りがちな整形外科学を救済している。
伝統医学の過剰な思想は、雄大ではあるけれど必ずしも上等とは限らない。操体法の思想は、過剰で些末で形式的な観念化を避けながら、伝統医学のもつ全体性を理論と実践の系に生かしているように思われる。
ただ、身体姿勢、運動あるいは動作に歪み(を生ずる事象)の連鎖に階層があり位相があるのが身体の全体性の実相なのだとすれば、生じてしまった歪みもまたその連鎖の一層(相)に過ぎないのであって、これも一つの手法である、というほどの自己限定がそれこそ全体性の思考に通じるのではないか、と全体性を考えながら分析したくなる。
足首の硬さ、動きやすさは下腿・大腿筋系の屈伸両系のトーヌスあるいはその差によるのだとしたら、例えば下腿筋群のトーンや筋腹長を決めているのは(生理過程としては筋内固有感覚器とその反射系の働きだとしても)どのような要因だろうか。
ここに、踵と下腿を足関節でまたぐ一関節筋であるヒラメ筋をその代表選手として着目した、「支持系筋群」という概念を考えている理由の一端がある。

◆腰痛の予防と治療の第一歩は、腰椎や仙骨周辺の障害であれ腰筋の障害であれ、まずはタイトなハムストリング筋群を弛めることにある、というのは理論的にも実践的にも知られていることである。にも関わらず、自分自身も含め巷の医療機関の対処は、まず腰そのものに眼を向けはするが、そこに連なる下肢全体、背中全体を眺め、動的な「連鎖」「重なり」を考慮するのが疎かになりがちである。

実際、タイト・ハムストリング筋群を弛めるのは難しいことで、患者自身が苦痛に耐え(後は気持ちがいいのだが)労と時を惜しまずに自己改造に取り組まないと成功は覚束ない。  当座の痛みを緩和することと、傷害を生じにくい身体機能と動作パターンを獲得することの間には大きな隔たりがある。患者も治療者も安直に流れやすい。
大腿後面の大きな筋群であるハムストリングスは、下腿固定位では膝関節を伸展し、下腿遊相位では膝関節で下腿を屈曲する強力な動作系筋である、と同時に大腿固定位では股関節で大腿に対する骨盤の前方回旋を制動し骨盤を支持固定する支持系筋でもある。

腰痛の直接因とされる椎間板や椎間関節などの脊椎周囲、骨盤と脊椎を連結する仙腸関節、それに腰背筋にかかる負荷のレベルは、骨盤支持系筋であるハムストリングスの伸展性にかかっている。ハムストリングスの伸展性が、脊椎周囲、仙腸関節、腰背筋の傷害の遠因となっていることに間違いはない。
繰り返せば、ハムストリングスは膝と股関節をまたぐ二関節筋であり、ヒトの直立位において大腿骨に対して骨盤-体幹を引き上げ起こす支持系筋群である。ヒトの作業姿勢として最も重要な中腰前屈位は、股関節での大腿骨に対する骨盤の前方回旋と下部腰椎・仙骨の間での屈曲性に依存している。ハムストリングスの伸展性は、ヒトが膝・股関節の伸展位をもって直立したときの筋腹長として固有知覚系を介して「記銘」されている。ハムストリングスの伸展性は、骨盤の前方回旋の度合いを左右している。

タイト(「記銘」筋腹長が短い・収縮残留が大きく硬く窮屈)なハムストリングスは、骨盤の前方回旋を制動することで、中腰前屈位における下部腰椎・仙骨の椎間による屈曲の依存度を高め、下部腰椎椎間板と骨盤仙骨連結部への負荷を増すことになっている。

作業姿勢として最も重要なこの中腰前屈位では、足関節と膝関節の屈曲位を伴うことで、腰椎・仙骨での屈曲度を大きくすることなく、骨盤の前方回旋の依存度をより少なくして体前屈を達成することができる。つまり、ハムストリングスの骨盤制動作用による下部腰椎椎間板と骨盤仙骨連結部への負荷の増大をより少なくするには、ハムストリングがタイトでないことはもちろん足関節と膝関節の屈曲がこの肢位でスムースに実現されることが重要である。

この場合、膝関節と足関節の屈曲は常にセットになって機能しており、足関節の屈曲の深さが膝関節の屈曲位の深さを規定するが、その足関節の屈曲位を規定しているのは下腿のヒラメ筋の伸展性あるいは遠心性収縮である(より正確には、ヒラメ筋の働きは足関節において下腿-体幹を後ろに引き起こし前へ倒れるの防ぐ直立の第一制御エンジンである。足関節が屈曲位となっても前倒しないでいられるのは、このヒラメ筋の遠心性収縮の働きのおかげである)。

さらに、中腰前屈位では、軽度屈曲位で固定された下腿に対して膝関節で大腿を軽度屈曲位に支持固定し、中腰位となった体幹が後倒し腰が落ちてしまうのを防いでいるのは強大な膝伸筋=大腿四頭筋群である。この時、四頭筋群は支持系筋として働いているが、歩行、走行、起居動作時には主要な動作系筋であり、そのため応答性が高い粗大力を発揮して筋腹長の伸縮が大きい反面、疲労しやすいという性質をもっている(逆に支持系筋群は、応答性は決して高くないが、ねばり強く持久力があり、筋腹張の伸縮が少ないなどの性質をもったものとして一般的に定義されうる)。

ハムストリングスは、同じくこの大腿の動作層で、固定された膝・大腿を起点に股関節で骨盤の適度な前方回旋を支持固定(つまりは制動し)しながら下部腰椎椎間板と骨盤仙骨連結部への屈曲負荷を和らげつつ作業姿勢の保持を実現している。
中腰前屈位は、足関節屈曲位で下腿が支持固定され、膝関節屈曲位で大腿が支持固定され、柔らかいハムストリングスが骨盤前方回旋の制動作用を適度に弛めることによって理想的な作業姿勢となる。
作業姿勢で腰を十分に落とすには、ハムストリングの柔らかさ、それに膝と足首の柔軟性が必要であり、これが腰痛予防と養生の基本原則となるわけである。

腰痛治療に使われる足の太陽経筋のツボや足関節周りのツボは、上記のような運動連鎖系の中で位置づけることが可能である。
ヒラメ筋やハムストリングスなどの支持系の筋群のハイトーヌス・収縮残留状態・固有長の短めの「記銘」状態・つまりは筋腹の硬さ・握圧痛の強さ(筋硬)を解いてやることの意義は、このような運動病態論の流れのなかで考えることができる。

◆直立し二足歩行するヒトの姿勢維持において、静的にも動的にも大地に対して脚を支持し固定しつづけるヒラメ筋は支持系の第一制御エンジンである(腓腹筋は、歩行や動作の第一推進エンジンとして大地を蹴る)。

支持系筋群は、相対的な比較的な意味合いでであるが、応答性は決して高くないが、ねばり強く持久力があり、筋腹張の伸縮が少ない、縁の下の力持ち的性質をもっている。この中でも特に「筋腹張の伸縮が少ない」こと、関節固定を実現する筋腹長の短縮を伴わない等尺性収縮と遠心性収縮が主体である点(大きな関節動作を実現する等張性(求心性)収縮が主体の動作系筋と違って)が、運動器傷害の連鎖の中で注目されるべきであろう。  大きな動作を伴わず、伸び縮みが少なく、かつ長時間にわたって高い緊張を強いられている等尺性収縮が主体である支持系筋群は、タイト(「記銘」筋腹長が短い・トーヌスが高い・収縮残留が大きく硬く窮屈な)な筋腹をもつ必然性が高いことになる。

ヒラメ筋やハムストリングスや中殿筋や上腕三頭筋の筋腹の硬さ(筋硬)は、筋腹をゆっくりと強く握る握圧法や指圧によってテストすると、たいていは極めて強い痛みを発することで知られる。これらの筋肉の筋腹は、ただ硬いのではなく握圧や指圧によって特異的な痛みを示す。等張性収縮(求心・遠心性も含め)が主体の動作系筋群の筋腹に、同じような握圧や指圧を加えても、このような特異な痛みは生じない。

この支持系筋群の筋腹の握圧や指圧で示される特異な痛みは、筋内圧力、筋膜刺激、筋腹内を走行する神経に対する圧迫刺激など何れかによるのであろう。

支持系筋群のこの特異な握圧痛は、支持系であるが故の慢性疲労として考えられる。支持系筋群の慢性疲労は、支持系の機能である多関節運動における関節軸位や関節滑動の制御を損ない、結果として関節並びに関節周囲器の傷害を招く遠因となる(緩慢な捻挫)。

このような特異的な握圧痛を示す支持系筋群に、繰り返して握圧法やストレッチや操体法や鍼刺激を加え続けると、この握圧痛はかなり軽減する。

◆膝関節の動作において、関節の緩衝適合の装置である半月板を屈伸位の最適位置に誘導適合させているのは、内側ではハムストリンクグスの一部でもある半膜様筋、外側では下腿後面筋の膝窩筋であるとされている。膝の屈伸に際して、これらの誘導・調節系の筋群が正しく働くことによって、関節の緩衝適合が実現している。

関節の緩衝適合の不具合は、様々な関節構成体の急性あるいは慢性の損傷をもたらし、関節運動を障害し軟部組織を傷害する。  誘導・調節系筋群も支持系筋群と似たような性質をもっており、やはり慢性疲労と考えられる筋硬が出やすく、握圧痛を強く示しやすい。膝窩筋の握圧痛も強いもので、腹臥位で膝裏の中央からやや内側よりの部分で腓腹筋腱と共に硬く触れるこの筋の握圧痛は、ヒラメ筋のそれに劣らない。

原発性の関節滑膜炎などを除く多くの膝痛は、関節の緩衝適合の働きによって保護されている装置の傷害と考えられ、膝の屈伸における誘導・調節系の筋群(膝窩筋、半膜様筋、内転筋、大腿筋膜張筋など)の関節制動機能が損なわれた結果であろう。

◆下の表は、勾配を変化させたトレッドミル歩行時といろいろな姿勢において、身体各所の筋肉群がどの程度のエネルギーを出しているかを調べたものである。

後下腿筋群はヒラメ筋と腓腹筋を、後大腿筋群はハムストリングスを、前大腿筋群は大腿四頭筋をそれぞれ現している。

歩行では、足首を支持固定しながら地面を蹴る、ヒラメ筋と腓腹筋(合わせて下腿三頭筋)の働きの大きさが特徴的である。勾配がつくに従って大腿四頭筋、さらにハムストリングスとその筋肉エネルギー出力が上がっているのがよくわかる。

  勾配0度 勾配2度 勾配4度 勾配6度 勾配8度
体幹起立筋群 25.4 12.0% 19 8.0% 21.3 7.4% 28.3 9.2% 24.3 7.1%
前腹筋群 16.9 8.0% 18.4 7.8% 20.5 7.1% 21.2 6.9% 21.4 6.3%
臀筋群 15.6 7.4% 17.9 7.5% 27 9.3% 34 11.1% 32.7 9.6%
前大腿筋群 34.5 16.3% 57.7 24.3% 75.9 26.2% 79.7 26.0% 110.4 32.5%
後大腿筋群 39 18.4% 47.8 20.2% 49.9 17.2% 54.4 17.8% 52.5 15.4%
前下腿筋群 11.7 5.5% 11.4 4.8% 13.5 4.7% 14.3 4.7% 18.1 5.3%
後下腿筋群 69 32.5% 65 27.4% 81.3 28.1% 74.3 24.3% 80.6 23.7%

トレッドミル歩行における主要局所筋エネルギー代謝量(単位W)  (横山 1980) 
  ※赤枠は50ワットを超える筋群

各種の姿勢での特徴は、爪先立ち・弛緩立位・下り坂立位・中腰位の各姿勢での後下腿筋群の出力で、爪先立ちのそれは足の底屈に要する筋力を意味しているが、他の三者は体前傾に対応して体幹を後ろに引き起こしている直立の第一制御エンジンとしての役目を意味している。
      この表の中腰位は、写真も図もなかったので詳細は不明だが、おそらく前屈の意味であり、腰を落とすという意味での中腰ではないようである。本論中で言及している中腰前屈位は中腰2に近いだろう。             

  爪先立ち 登り坂立位 緊張立位 弛緩立位 下り坂立位 中腰位1 中腰位2 中腰位3 最前屈位 椅座位 仰臥位 伏臥位
体幹起立筋群 8.5 4.9 6.4 9.2 3.3 34.3 16.3 14 5.3 4 1.6 3.5
前腹筋群 7.8   19.7 5.9   8.3 7.3   7.1 5.6 2.7 3.4
臀筋群 4 7.6 17.4 5.7 2.7 11.7 9.3 15.8 13.8 2.3 1.5 2.4
前大腿筋群 7.1 7.7 21.9 6.4 6 4.8 53.3 75 4.9 2 1.2 2.8
後大腿筋群 4.4 1.5 3.3 2.8 1.6 8 2.6 3.1 12.2 0.7 0.5 1.2
前下腿筋群 3   2.7 0.7   0.8 2.3   1 0.2 0.5 0.3
後下腿筋群 25.5 6.3 5.6 11.2 12 6.6 13.5 13.8 9 1.4 1.4 1.3

各種姿勢保持中の主要局所筋エネルギー代謝量(単位W)  (横山 1993)
※赤枠は10ワットを超える筋群

◆同じような筋電図法による姿勢の研究では(岡田 1972)、
   直立姿勢で
      ヒラメ筋の10~20%の活動レベル(他の筋群はほぼ5%未満)
   中腰姿勢(腰を落として前屈はしない)で
      大腿四頭筋の10~20%の活動レベル、
      腓腹筋(外側頭)とヒラメ筋の5%前後の活動レベル(他の筋群は5%未満)
   という結果が出ている。

◆何れにせよ「ふくらはぎ」を形づくっている下腿三頭筋(ヒラメ筋・腓腹筋内側・外側)の働きぶりは大変なものである。太腿四頭筋と「ふくらはぎ」の筋肉 の容積と重量を比較すれば、3対1ほどであろうが、局所エネルギー代謝量の差はそれほどではない。大腿四頭筋の疲労しやすさ、筋肉の痩せやすさと、「ふく らはぎ」の疲労しにくさ、筋肉の痩せにくさは好対照である。

アメリカで男性性の象徴は、と言えば「ふくらはぎ」の筋肉の盛り上がり方(特に腓腹筋外側頭か)という。それで「美容整形」では、「ふくらはぎ」を大きくふくらませる形成術があるそうである。

アトラス、ヘラクレス、ダビデなどの彫像の「ふくらはぎ」、相撲絵に見られる力士のふんばった脚に見られる「ふくらはぎ」。「ふくらはぎ」には、「ふともも」とは違った縁の下の力持ち的な力強さのシンボリズムがある。

◆ふくらはぎの養生法として患者さんに指導する幾つかの体操。
      
つま先立ち・踵落とし(階段などの段差を利用してつま先で支えて踵を十分に落とす)
       ・・・・ ふくらはぎの強い収縮と強い伸展
    
つま先立ち歩行
       ・・・・ ふくらはぎの強い収縮、立位バランスの強化
      
つま先立ちスクワットと踵つけ蹲踞
       ・・・・ 腓腹筋の強い収縮と少しの伸展、ヒラメ筋の強い伸展、立位バランスの強化
      
四股ふみ(踵を地面につけ十分に腰を落とす、可能であればスリ足前進)
       ・・・・ ヒラメ筋の伸展しながらの強い収縮(遠心性収縮)
       ・・・・ 大腿内転筋とハムストリングの伸展しながらの収縮

いつかデジカメ写真を掲載してみたいと思っている。

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2014年11月24日 (月)

めまい2題 (2002/07/15)

◆Tさん53歳のめまい
Tさんは、10数年前から年に数回ほど肩こりや胸部圧迫感を訴えて来院されていた。
1年半ほど前、嘔吐と耳鳴りを伴う突発的な回転性めまいの発作があり、耳鼻科ではメニエル氏病とされ抗暈剤と精神安定剤を投与された。同時期に受診した婦人科では、強い不安感や冷えのぼせや肩こり頭痛から更年期障害とされ、ホルモン補充療法を受けている。
めまい発症当時から当院にも来院されるが、不安感が強く継続的な鍼灸治療はできなかった。
めまい発症から3ケ月ほど経過した時点で、再度受診され、それ以来週1回継続的な治療を行っている。

再来時、回転性のめまい発作はないが、頭の位置を変えるとしばらくめまい感(浮遊・動揺感)があり、立位で身体が揺れる動揺感、床の傾斜が強く誇大に感じられて体が傾いたり倒れそうになる強迫感がある。歩行時には雲の上を歩いているようでだんだん斜めに進んでしまう。
耳鳴りについては、よく聞くと首筋が凝ったときに「ボツボツ・ザーザー」といった音がする程度で、これは血管雑音と考えられる。めまい初発時の耳鳴りの詳細は不明。
冬から春にかけて、頭部顔面の熱感と足が冷たくてジンジンする冷えのぼせ症状が強く、特に室内外の温度差のある状況で強く誘発される。冷えのぼせ症状がはっきりと出ているときは、胸部が圧迫されるようで頭が重たく、めまい感も増強する。
頭部のぼせ感がないときにも、下腿から足にかけてはジーンとした感覚があるが、必ずしも冷えは伴わない。
不安傾向の強い方で、最初のめまい発作が強く印象づけられているためもあるのか、「めまい」感に過敏に反応される。

更年期の「頭部のぼせ循環不全」、生来の不安心気傾向、不眠による脳疲労が重なり、頭部の内耳・前庭迷路系に何らかの循環機能異常が生じた結果、最初のめまい発作があったものと考えられる。
こ の時の内耳の機能障害の範囲が広く、迷路系だけではなく蝸牛系(聴覚域)にも何らかの異常があり、耳鳴り・難聴など症状が同時に強く出ていればメニエル氏 病とされるのだろうが、この方の場合は、蝸牛系の異常はそう大きくなかったのではないかと推測している。精密な測定を行えば、軽い難聴はあるかも知れない が、耳鳴りに関しては内耳性ではないようである。

初発の回転するめまい発作が収束した後に続発しているめまい感は、迷路系の障害そのものではなく、姿勢を維持するための統合された制御の仕組み全体の不調として考えると分かりやすい。

興味深いのは、通常は意識されるほどではないベランダの床の外側への僅かな傾斜が過大に感じられると、体が傾いてしまうような平衡覚の違和となる が、下腿から足部のジンジンする感じが強いほどその傾斜感が強く、ジンジンがないと傾斜感もなくなるという。これは、道路を歩くと真っ直ぐに歩けずに路肩 に偏ってしまうという話にも通じる現象のようである。真っ直ぐに立ち続ける場合でも、僅かな体動揺が収束調節されずに増幅してしまうものと考えると分かり やすい。

Tさんは、下腿ふくらはぎの筋肉の緊張を解いてやるような治療で、足部のジンジンは軽減し、かつ動揺感も軽減する。また、手の合谷にやや強い鍼をす ると、頭部のぼせ感が改善すると共に足部の厥冷も改善し暖かくなり、ジンジンとした感じもなくなり、同じように動揺感も少なくなる(自宅療法の足湯も同様 の効果がある)。

◆Cさん42歳のめまい
Cさんは4年ほどにめまい発作を起こし、それ以来、めまい感と頭重・頭痛に悩まされ、2年前に福岡に転居した頃から一時期は「うつ」症状もあったとのことで耳鼻科、心療内科に通っているという。緊張しやすく心気傾向の強い方である。
初発のめまい発作の病状も程度も不明な点が多く、真性の回転性めまい発作であったかどうかは分からないが、続発しているめまい感に関しては「良性頭位性眩暈」と診断されているようだ。

Cさんの場合は、体動揺感や浮遊感ではなく、頭の位置を変えた直後(姿勢・体位が変わった直後)に「頭がフワーッとして流れる」ようなめまい感で、そのめまい感を予期し予防を試みているのか、頭の位置の固定を強く意識している様子である。
心療内科の先生は、頭(重)痛については筋緊張性頭痛と診断しているらしく、それは頭の位置固定を意識してか首筋の筋肉に強い緊張がみられることからもうなずける。

脊椎動物の前後と腹背を定め身体位置を三次元空間の中に位置づけ、また変位をモニターする装置が、前庭迷路系である。それぞれ直角に交差する三半規管と卵形嚢は、迷路を収納している頭部と重力世界との位置関係を感知し続けている。

姿勢制御にとってまず一次的に重要な頭部定位は、この前庭迷路系と視覚系による一次入力データが、眼筋頸部筋群の作業を誘導し、同時にその作業デー タと位置データが二次的な入力データとなることで、ひとまずは完遂されるらしい。姿勢制御における眼筋頚筋反射の重要性の所以である(発生的には「首座 り」、「探索位獲得」ということになろう)。

ひとまず定位された頭部は、直ちに(あるいは同時に)体躯の定位を要求し、陸棲四足動物では体肢(五本目の足の尻尾も含み)の、水棲動物では鰭と尾 のそれぞれの作業が誘導され、その作業データと位置データは、逐次的な入力データとして姿勢動作の統合に導かれる。体性姿勢反射の由来である(発生的には 「四つ這い」「お座り」「つかまり立ち」そして「一人歩き」、「運動位獲得」ということになろう)。

ところで、これだけでは単なる自動運動に過ぎないのであって、個体の意志による(と見られる)各種の行動における姿勢制御は、前述の自動運動的(反 射的で不随意的なと呼ばれたりする)な姿勢反射が、行動に向けた個体意志の統合下にありながら、かつ細部にわたっては支配されない仕組みによって完成され ているように思われる。

運動の随意性と不随意性についてはもっと考える必要があるが、大略としては間違っていないだろう。

われわれは動物は、意識し意志することなく、「正しく適合された」肢位と姿勢と動作が自ずから可能なように、自らをプログラムし、ロボット様と形容 されるようなぎこちなさではなく、しなやかな動きを実現してきた。そこに余計な「はからい」が介入すれば、まさしくロボットの様なぎこちなさが見られるこ とになる。
無心で、力まず、力を抜いていなければ、姿勢も動作もより効果的ではなく、そして美しくもない。

Cさんの場合、頸部筋の緊張と姿勢「不安」の悪循環をどこで絶てるかに治療の正否はかかっている。
真っ直ぐ正面を向き少しこわばった顔が、治療後には肩や背中の緊張が緩むとともに柔和に自然になる。
この良循環を繰り返し経験してしっかりと学習すれば、めまい感や頭痛から卒業できるのではないかと考えている。

膝痛追加
◆Mさん71歳の膝痛
前回、スポーツ選手と中高年者の運動器障害には、相似的な発症病態があるととらえ、
スネとフトモモの支持系筋群の協調性低下→膝関節の動的安定性低下→膝内半月板軽微損傷
という連鎖構図で、「癖になった」膝痛の診方を例示した「寝返りをうった拍子に同様の膝痛を発症したMさん71歳」が、また同様の発症経過をとった強い左膝痛で来院された。
今までは数日で痛みが半減していたのが、今回は左脚に加重する痛みが軽減せず、家人の勧めもあり整形外科に行って診察を受け、レントゲン写真を根拠に、関節の変形で棘が出ており、関節間隙が狭くなり、中がすり減ったための(半月板あるいは軟骨か)膝痛とされたとのこと。
M さんの「癖になった」膝痛は、外側半月板の外縁がフトモモとスネの骨に挟まれて部分的に圧潰したための膝痛と診ている小生は、下腿内側縁から深い部分の筋 肉の凝りを狙った鍼をして、かつヒラメ筋の握圧法を施し、そして背臥位自然体位で足首から下腿をゆっくりと無理なく牽引し、さらにゆっくりと自然に屈曲す る動作法を行った。
術後は、加重できなかった左膝に加重できる、歩行もなんとか可能、となる。
3回目の治療時には、午前中は立位で膝加重してもほとんど痛まぬが、午後になると次第に痛くなり、仕事を終える頃には加重できにくくなるという。
このような症状の発現現象は、半月板縁の傷が十分に修復していないところに、下肢筋の疲労(特にヒラメ筋や膝窩筋)によって膝関節の静的・動的な安定性が損なわれる結果ではないかと考えられる。

間違っても、関節変形や構成体変性が単純に痛みに結びつくのではないと思う。
どのような病態であっても、流動する機能連鎖のその相互的総合的な関係の網の目のそれぞれが原因となり結果となりうるのだと。

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膝痛とヒラメ筋 (2002/07/01)

Tさん77歳、Fさん60歳の階段下り時のアクシデント TさんもFさんも階段を下りていて膝を傷めたとの訴え。ご両者ともに自宅の階段は、中ほどで90度方向が曲がる踊り場がある階段で、同じようにその踊り場付近で曲がりかけの時に傷めたとのこと。 Fさんは、加重して歩くと膝裏に強い痛みがあり、そのために膝を曲げずに伸ばしたままで突っ張ったようにしてビッコをひいて歩いている。Tさんは膝の裏からふくらはぎにかけて痛みがあり、わずかに脚を引きずる感じ。 スキーなどで膝を曲げる時に捻りの力がかかると半月板を傷めてしまうが、このケースはこれに似た機転で生じた軽い膝関節の捻挫と考えてよいような状態と考えられる。

階段下り時の加重脚の膝が曲がる時、同側の足が膝の曲がる向きについてゆかず残ってしまい、そのため下腿(すね)が太腿(ふともも)に対して外向き に捻れた状態で膝関節に加重がかかったために、膝半月板の後ろの縁が脛と太腿の骨の間で押しつぶされた格好となったものだろう。この時に、お皿の骨が移動 する部分でも関節の袋の縁の一部がヒダとなってお皿と太腿の骨の間に挟まって傷めることもある。このような時の痛みは膝の裏ではなくお皿の周囲にある。

スキー中やバスケットボールやサッカーなどで膝が屈曲位で転倒し膝関節に大きな捻りの外力がかかった場合などでは、半月板に強い押し潰しと引き裂きの力がかかり、最悪では断裂したりする大きなケガとなる。
普 通の健康な人・状態での階段下り時にも、軽度ながらも屈曲と捻れの外力が膝にかかるはずだが、この時は半月板を押し潰される位置から後ろに引っ張る調節力 やお皿の位置を調整する力が働いて何事もなく動作は可能となっている。もちろん、一定以上の曲げ捻りの力がかかれば、やはり半月板の縁やお皿周囲のヒダは 傷んでしまうだろう。

突飛に聞こえるが、スポーツ障害と中高年者の運動器障害の成り立ちには似たところが多い。このことはあまり言われていない。

競技スポーツ選手は優れた素質をもった身体機能を鍛え上げ、その限界点に近い所でそれぞれの競技を行い、関節や筋肉を酷使する。優れた素質を持ちそ れを鍛え上げるのだから、当然その機能的な限界点は高いレベルにある。だから、少々の日常生活動作程度の「動き」では故障を起こすことは稀であろう(発症 機転によってはそれでも生じうるけれど)。しかし、高いレベルにある身体機能を高いレベルで使うことが競技なのであるから、スポーツ競技者の運動器の使用 水準は限界点に近いところにある。だからある意味では容易にスポーツ障害は起こりうる。

一方、中高年者の場合は、加齢と共に筋力(力の大きさそのもの)や動作や運動の協調性が低下しがちだ。特に協調性は、大きな筋肉の単純な筋力低下で はなく、多軸多関節性に静的・動的に調節されている精妙なアラインメント(動作や位置において最適な関節配置が調節されること)や関節構成体の配置制御を 行っている縁の下の力持ち的な存在である関節位置制御系=支持系筋群の慢性疲労や筋硬などによって損なわれやすい。
つまり、中高年者の場合、その運動器の身体機能の限界点が低下しているのであるから、日常生活動作のような何でもない動作でもその機能限界点に近い負荷になりえる。

こんなわけで、スポーツ選手のスポーツ障害と中高年者の運動器障害は、似ていると考えている。

さて、階段下り時の捻りで傷めてしまったこの中高年のお二人も、膝関節の動的安定性が低下している訳で、スネとフトモモの支持系筋群の協調性が低下 しているものと考えられる。膝の動的安定性には同時に足首の関節の安定性や柔軟性も関係するわけで、このような場合に膝を傷めるか足首を傷めるかは微妙な 差のようにも思われる。
ただ、スネのキズならぬ膝の弱点の方が少しだけ大きくて、結果として膝を傷めたものと思われる。これは、例えば、寝返りを うった拍子に同様の膝痛を発症したMさん71歳や、地下街のタイル張りの下り坂の通路で方向転換した拍子に膝痛を発症し、動けなくなってタクシーで来院し たKさん69歳のように、「癖になった」膝痛という診方で共通している。さらに共通していることは、過体重もそうである。

治療と養生の目標は、①膝関節の動的安定性の再建、②傷めた局所組織の修復、となる。
②は、多少は局所の血行促進も役には立つだろうが、決め手はその人の「自然治癒」任せになる。
①は、まずは下腿のヒラメ筋という深いところの支持系筋の親玉の慢性疲労を回復し、筋硬を解き、柔軟性と応答性を改善すること、そのためにふくらはぎの内側のスネの骨のすぐ際の深い部分に、深めの針をして握圧法(もむのではなくゆっくりしっかりと圧迫するような)を行う。
次に太腿の後ろ内側の筋肉、股関節の外後ろの筋肉、骨盤と脊椎をつなぐ仙腸関節の周囲の筋に同様の処置が必要であろう。よく言われる太腿の前の筋肉の筋力強化の訓練も役に立つ。

ヒラメ筋という筋肉は、直立二足歩行を行うヒトの屋台骨となっている筋肉で、地面に対して身体が前に倒れないように後ろに引っ張り続けているし、歩 行では地面を強くけり推進力の源となっている(これには、おなじくふくらはぎを形づくっている腓腹筋や太腿の前の筋肉も大きな力となっているが)。ほとん どの立位姿勢や平地歩行、よほどの急勾配でない限りの坂道歩行で、ふくらはぎの筋肉は圧倒的な仕事をこなしている。
それほど働いているが、自覚的 にはそれほど疲労感がない部分でもある(特に太腿の前の筋肉などに比べると)。これは、持続的な仕事に適している支持経筋群の筋肉の構造によるものだが、 潜在的な筋疲労と考えられる筋硬は相当なものである(ヒラメ筋の握圧は10人中10人が悲鳴をあげる)。

このヒラメ筋が足首を安定させてスネの骨を固定するお陰で、膝裏の筋肉や太腿後ろ内の筋肉は膝の屈伸時に関節構成体をうまく誘導制御できている。
ヒラメ筋を中心とした膝の機能論を経絡論的に考えると、足の陰の系列の経筋に一括して当てはめて考えることができる。下腿内側、大腿内側、下腹部は連なっており、その連なりに属する病症は、この連なりの中に治療部位を診立てるとうまくゆくことが少なくない。

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2014年11月 9日 (日)

肥満の改善なしに膝痛が改善する訳 (2001/12/03)

◆膝痛を訴える標準体重15キロオーバーの女性○さん
40台前半のこの女性は、甲状腺腫の切除手術後ここ数年体重が身長換算体重から15キロほどオーバーしている。何らかの代謝異常も考えられるような太り方。
半年前からパートで保母の仕事に復帰している。
一ケ月前、子供を抱いた姿勢で床近くの低い場所の物を操作したときに左膝を捻り、それ以来左膝のお皿(膝蓋骨)周囲に動作時に痛みがあり、子供の世話をするのにも困難を感じている。
近くの整形外科では、減量と保母の仕事を休んではとされ、鎮痛薬を処方される。保母が不足がちで休みにくいとのことで来院される。
10年ほど前から時々診ている患者さんで、久しぶりに拝見して肥満の程度に少し驚いたが、本人はいろいろと減量法も試み、食生活にも気をつけている所からすると、何らかのホルモンバランスが体重増加の一因かも知れない。

小さな子供を低い位置から抱き上げる時には、膝を上手に使わないと腰も痛くなることはご本人も自覚されており、今回の「ケガ」も十分に腰を落とさず半身の形で膝を捻りながら曲げたことが直接要因と考えられる。
膝 関節の捻挫などの「ケガ」で軽度のものは、関節内障害略して「内障」と呼ばれたりする。本式に靱帯や半月板の一部が破損したり断裂したりするほどの「ケ ガ」ではないが、半月板の「縁」や関節の袋の一部は「捻りながら曲げる」動作を行うと、関節部やお皿の間に「挟み込まれて」損傷してしまうことがある。
特にお皿の骨の周りの組織は、大きく屈伸するときに大きく移動する皿の骨と股の骨の間に「挟み込まれ」るような状態になりやすいようだ。
運動軸が1~2本の関節(ちょうつがい)では、どういう場合でも「捻りながら曲げる」ような複合連続動作は、関節の内部とその周辺部の「装置」を破損してしまう危険性がある。

この女性も、直接的に傷めている部位はお皿の内側の下縁付近であり、そこの生じている「キズ」がふさがり丈夫な組織に修復しなければ痛みは無くならない、ということになる。だから、安静と休養は第一条件であろう。
減量の意義は、屈伸時に膝にかかる荷重がより少なければ関節とその周囲への無理が少なくなる、ということでこれも条件の一つであることには違いない。
だがしかし、問題はもう少し複雑であって、下肢の筋力、脛とふくらはぎの筋肉の柔軟性=>足首関節の柔軟性と耐荷重能力などについても検討する必要がある。
(膝痛とふくらはぎ 股と膝と足の「並び」 の項参照)
この女性は、ふくらはぎの深部(内脛の骨のすぐ際から深くに触れる)の強い筋肉の強ばりを解いてやることで、「体重はそのままで」「大して休養もとらず」に膝痛は半減し、週1回4週ほどでほぼ仕事中の痛みは消失した。

ふくらはぎの深部(ヒラメ筋とか足底筋など)のこわばりは、万人共通といえるほど誰もが硬く、「握圧」すると飛び上がらんばかりの痛みを示す。
私の理論、「支持系筋のこわばりとその改善」の仮説は、関節内障害であっても関節炎であっても関節周囲障害であっても同様に養生と治療の基礎理論になると考えている。

◆猪首の×さんの頸腕神経痛
障害が軽度で治療も早かったこともあり順調に回復している。
このような神経痛の場合、首→肩→腕→手の順に症状が出現し、同じく首→肩→腕→手の順に症状は軽減し消失していく。つまり、この方の場合、手の甲の痛みとシビレ感の改善が最も遅れ、感覚のマヒが最後まで残る。
治ゆした後も、正月に向けての高所での大ばさみによる剪定作業は、今年は止めた方が安全である。

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2014年10月 5日 (日)

側彎の×氏他 (2001/11/05)

◆びっくりするほど背骨が左に側彎した×氏。 これほど見事な疼痛性側彎の方は久しぶり。C病院のMRIでも特に問題がないと言われ、ここ一ケ月も体がひん曲がって家でも職場でも大うけしていると苦笑されているが、触診で腰椎三番目あたりを探ると背骨の左側縁に強い圧痛とわずかな変位があり、拳で狭い範囲の背骨を叩打すると飛び上がらんばかりの痛みがある。三番目の椎間の左側に何らかのトラブルがあるはずだけれど、なんでXPでもMRIでも解らんのだろう。良く聞くと触診らしい触診はなかったとのこと。 ごく一般的には、椎間板の右側にかかる圧力を回避する反射が左側彎だろうが、氏の場合は矛盾している。

◆11年来、喘息と馬尾神経痛(主に臀部の痛み)で診ている○さん。 脚の筋力がだいぶ低下している。特に太もも。間欠性跛行(一定の距離・時間歩く・立つと、歩行と起立に難儀し休息で回復するような状態)もここのところ少しずつ強くなっている。 これまでの10年あまりの間でも同様に症状が強くなった時期もあり、今回もそのような悪化の波の頂点とも思えるが(希望的観測or思いこみ)、M先生の所で6年ぶりにMRIを撮ってもらうことになる。  

◆高校生の頃から診ている社会人3年生の△君。 下肢伸展挙上も30度で強陽性、しっかりと根性神経痛の様相が出ている。もうすぐ結婚するとのこと。しっかりと飛陽(ふくらはぎの中央外側で母趾側の神経症状が出る場合の特効穴)を揉むように。 神経痛の鍼灸治療の理屈は矛盾が大きいけれど、自分の体験からも、足首の関節の柔軟性にも関係するふくらはぎの深部の神経刺激点や筋肉の硬さを改善しておくことは腰痛養生の基本だと信じているのだが。 (私自身は、小趾側の神経症状に対応する外側のすねの附陽が「だる病み」に効果的だ。)

◆NHKの朝の番組で、膝痛を特集した公開放送の中で、レスラーみたいな立派な体格の理学療法師の先生が小生の「ふくらはぎ理論」もどき を紹介していた。思わずしっかりと見た。 「足首をくるぶしの上でしっかりと固定し、足首の関節を柔らかく数回ゆっくりと回す」と、膝痛の予防と治療に効果的との説明。 なかなかいい線を突いているけれど、ふくらはぎ深部の筋肉を支持系筋群として捉え、それと足首の関節の動的な柔軟性との関係、さらにそれが膝関節の動的安 定性に大きな役割を果たしていること、同深部筋群の握圧法を評価していないこと、などなどまだまだ足りないな、と思った。要は観察力と考える力じゃなかろ うか。

◆70歳にして四十肩に悩まされている○さん。 腋の下の後ろの壁を形づくっている筋肉や腱が硬く縮こまっている状態と捉えている四十肩は、上腕部の支持系筋である三頭筋(力こぶを作る筋肉の裏側)の握圧痛の改善が治療の目安だと考えている。 手首上の外関や内側のゲキ門、それと三頭筋そのものが握圧法の基本治療部位。それらの部位の自己マッサージあるいは握圧法がかなり効果的。ただ、これだけで効果的すぎると商売あがったりで困るけれど。

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