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2014年12月10日 (水)

経絡原型論 はじめに

 これは、東洋医学鍼灸の理論的実践的な根幹をなしている「経絡」について、その生物学的な考察を試みるテキストである。

 当然の事ながら、いわゆる専門研究者でもない在野の一介の臨床家の戯言でしかないのだが、原理を希求する構想においては専門家も非専門家もありはし ないのだという確信はある。その志においては、かのゲーテの「植物メタモルフォーゼ」の構想と何ら異なるところはないはずである(才能と教養は別にしての 話だが)。

 一年生草本の変身変態に、宇宙と生のリズムを観じ、その考察に創作とかわることない力を注いだであろうかの巨人の希求の強さほどではないにしろ、四季に 呼び起こされ、情動に応じ、体表に投影され、また、体表から干渉を受けるであろうわれわれヒトの〈生理〉としての「経絡(狭義)」、それは、遙か四億年の 昔、原始魚類が水陸両棲の一億年の歳月をかけて過酷な自然に絶妙に適応し獲得した「上陸の形象」の一つではないか、という想念が私の心をつかんで離さない (三木のそれは、脾臓の独立を「形態進化・発生」上のエポックとしたものだが)。

 地・水・火・風の天然自然の四大を、気象条件として要約すれば、水と温度につきてしまう。しなやかで丈夫なケラチン表皮と鱗の発展系としての体(羽) 毛、コラーゲン真皮とが作る皮膚気候圏による断熱と、皮膚血管系の開閉による放熱、これらの自律性体温制御系は、寒冷期・新生代に勝ち残る動物の必須アイ テムではなかったろうか。温度馴化は、寒冷のみならず熱暑への対応でもある。血管の開閉による自律性体温制御系は、汗の蒸発気化による奪熱冷却の機能を加 味することによって、より高度で幅広い温度適応力を持つにいたった。もちろん、このような高度な生理機能を可能となるのは、高い代謝レベルの維持であり、 そのためには四室心臓-循環系によるロスの少ない全身循環系が前提であるが。

 温度馴化を可能とする体温制御系の重要な構成要素が皮膚血管系であり、その全身的でかつ地域的な制御を可能としている統合の系列を、操作的な概念として構築したものを「経脈」として想定することができる。

 広義経絡に含まれる「経筋」という概念は、もっと古い起源をもった系列である。それは、内骨格系動物としての脊椎動物の起源に同期するであろう。
 支持系としての骨格と可動性関節、駆動系としての筋肉、それを制御する情報系としての神経、これらがセットになることで、動物は動く物となる。動く物 が、目標に向かって身体をくねらせ動かすとき、あるいは、一定の姿勢を保つとき、支持系と駆動系は情報系を媒介として一体となって目的達成に向かう - 食に 向けて腸管を運び、繁殖に向けて性器を運ぶ。この一体となった系列を「経筋」として捉えることができる。それは、原始脊椎動物の尾の「動き」に始まり、四 肢の起源となる鰭の水をかく「動き」を中継とし、陸棲四足動物の上下相反する「動き」の中に典型をみることができるだろう。

 最も古い層に想定されるのは、脈管外体液の循環動態を水の流れとして捉えた「絡(脈)」である。脈管の発生前も後も身体をその中に浮かべる体液の海、そ の海に行き交う潮の流れ、あるいは満ち引き。この身体を往還する体液の潮流は、太古の海が潮汐によって生命を育んだように、今も生物の最もプリミティブな リズムを刻み細胞の生を支えている。

 月の潮汐は、24.8時間で2回のピークをもった生物の時を刻み、また、29.5日で2回のピークをもった月暦をめくる。太陽は、それを23.29時間の生活時間に補正し、二十四の節気に区分し、また、約30日の生活暦をつける。

 非常に微細かつ繊細なこの「絡」の流れとそのリズムは、おそらく気圧や温度変動に対応する心身不調の淵源としてなぞることができるだろう。

 こんな思いつきの空想を、しつこくたぐってみようと思う。

( 2003/03/24 )

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