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2014年12月10日 (水)

植物性的と動物的について

◆豊穣な形態学
随分と前にMさんに勧められ、形態学者・三木成夫の唯一の生前刊行書であるという中公新書『胎児の世界』を読んでビックリしたことがある。
ビックリしたついでに当時購入できた三木成夫の著作を片っ端から買い込んで、積ん読していた。なぜ積ん読で熟読しなかったのか、と言えば、粘着するような・共感的世界が重たくてちょっと辟易したためだと思う。
同書のリズム論などは、我々「東洋」系の道の者にとってはお馴染みの陰陽五行説や経絡論に通ずるような印象があった。まだまだ若かったので辟易は仕方がなかったのかも知れない。
つい最近、機会があって積んどいた三木成夫の本を熟読玩味した。以前の辟易は多少残っているものの影は小さく、原形原理への希求の強さと深さに今更ながら感心している。

◆生命形態の始源 - 植物性と動物性 
約40億年前の原始地球ではメタン、硫化水素、アンモニア、水素などの無機物質が高温・高圧下で反応して有機分子がつくられ、鉱物表面で重合して高分子化し、紫外線が遮断された環境で細胞化したとされている。
原始生物は、それ自身で光エネルギーなどを用いて自分の躯体となり活動のエネルギー源となる有機物を合成する「独立栄養」体であったか、自分の体=有機物を自ら造らず他者の体(有機物)を横取りする「従属栄養」体であったかの論議があるらしい。
何れにせよ、この原始生物を始祖として、光合成などによる独立栄養を営む生物である少数の微生物と植物、その独立栄養生物を「食料」とする従属栄養生物である人間を含む全ての動物、菌類、多くの微生物が派生していったと考えられている。
従属栄養と独立栄養とは、とりもなおさず植物性と動物性につながる生物の原系区分となる事柄であるが、さらにこの原系区分は、あらゆる動物種にみられる肉 食種と非肉食種の分化という事柄にも相似的に貫かれている(一部の食肉植物の存在を考慮に入れれば、栄養の独立と従属の問題はあらゆる生物相にみられる原 理なのであろう)。

・・・古くから(動物の)「口-肛」の器官は、生本来、したがって、植物と共通した「栄養-生殖」の機能に携わるところか ら、それは「植物器官」と呼ばれ、一方(体壁を形づくる)「頭-尾」の器官は、上述のように動物だけに見られるところから「動物器官」と呼ばれてきた。こ うして、脊椎動物では、植物・動物両器官が、腹背に重なって体軸方向に細長く伸び、それぞれの入口-栄養門と感覚門-が頭部に、また出口-生殖門と運動門 -が尾部に開くという特徴的な体制が造られる。

・・・・・両者に共通した「栄養と生殖」の器官が、植物では、天地の方向へ”積み重ねられる”ように造られるが、これが動物では、水平方向に、しかも「感覚-運動」という新興器官のケースに”はめ込まれる”ように造られる。

「動物的および植物的 - 人間の形態学的考察」から
        三木成夫『海・呼吸・古代形象』うぶすな書院

一般に自律神経と呼ばれている血管や内臓諸器官を支配している神経系は、古くは植物性神経系と呼ばれた。言うまでもなく、この神経の支配(受容と 効果)を受ける動物における器官群は植物性器官なのである。「植物性」は、現在ではあまり使われなくなった用語となっている(現代では、体性系と自律系の 用語法が一般的である)。

 動物における植物性器官群は、
   ① 栄養物をとり入れる消化-呼吸系(吸収系)
   ② これを全身に配る血液-脈管系(循環系)
   ③ 産物を外に出す泌尿-生殖系(排出系)
 の三群に大別される。

この吸収-循環-排出の三つの過程に分かたれた「食と性」の機能は、植物の「栄養-生殖」と共通した働きとみなされることで「植物的」なわけである。植物状態や植物人間は、まさしく感覚-脳・意識-運動系といった動物性が欠落した動物生の状態としてそう呼ばれている。
このアリストテレスを祖とした「植物的(性)」「動物的(性)」の二分法による生物のとらえ方は、われわれ東洋の道では、それぞれ陰と陽に対応して概念化される(生物のみではなく万物の二分法であるが)。

陰陽という記号的象徴語は、一気にシンボル思考へと直結し、細かな考察を素通りがちであり、そこが東洋の思考の強みであり弱みとなっている。

「植物的(性)」「動物的(性)」の語は、体性系と自律系とされる近年の用語法よりはよほど自然に対する「思想」と「意味」を保持した豊穣さをもっている(そこが科学主義からすると意に染まないのだろうが)。

鍼灸の医学の根幹をなしている経絡を、植物系としての経脈と動物系としての経筋、原生物系としての絡(脈)として考えることはできないだろうか。
( 2003/03/24 )

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