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2014年12月10日 (水)

体温調節の比較生理(入来正躬1980)

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図1.体温調節機構のブロック図案      

  • 変温・外熱性動物の体内温も、恒温・内熱性動物と同様に一定の基準値に調節されている
  • 恒温・内熱性動物でも変温・外熱性動物でも体温調節機構の基本的なパターンに本質的な差はない
  • 心・血管系の反応は、恒温・内熱性動物と変温・外熱性動物で共通してみられる唯一の自律性反応である
  • 熱放散は、発汗、あえぎと共に、皮膚血管の収縮・拡張によりおこる皮膚温の低下・上昇によって調節される
  • 恒温・内熱性動物では寒冷刺激により皮膚血管は収縮して皮膚温が低下し、熱刺激により皮膚血管は拡張して皮膚温が上昇する。陸棲のは虫類でも同様に温刺激で皮膚血管は拡張し、冷刺激で皮膚血管が収縮する

表1.Endotherms哺乳類・鳥類とEctothermsは虫類・魚類の体温調節機序の特徴

体温調節系 恒温→内熱 変温→外熱
動 物 種 哺乳類 鳥類 爬虫類 魚類
 行動性調節
 自律性調節  産熱化学機序 代謝レベル
 ふるえ
 褐色脂肪
放熱物理機序  血管運動
 立毛
 発汗・蒸散 
 温度受容系(器)  皮膚
 脊髄
 視床
 温度調節系  神経

水棲動物である魚類でも同様に皮膚血流の温刺激による増加、冷刺激による低下がみられる。脊髄を選択的に加温・加冷すると皮膚血流は増加・減少する。
皮膚血管の温度刺激に対する反応は、恒温・内熱性動物でも変温・外熱性動物でもすべて同一方向である。
      
「水中に棲息する魚類にみられる皮膚血流の生理的意義については今後引き続き検討していき」 と記したこの入来らの研究対象の魚類が、いわゆる硬骨魚類であって、サメやエイなどの軟骨魚類でないことに注意。
軟骨魚類の体温調節機構、特に皮膚血管機能が知りたいところ。
      
デボン紀から石炭-二畳紀に起こったヴァリスカン造山運動の一億年の間、水陸両棲の生活を強いられ「上陸」の一歩手前で海に引き返した硬骨魚類の祖先たち が、水中とは違って寒暖差が大きな陸地の大気に曝された「体験」を経た証拠が、彼らの子孫たる魚類(硬骨類)の皮膚血管の振る舞いに残されているのではな いか。浮き袋が、空気呼吸体験の「入れ墨」であるように。
そしてこの皮膚機能は、サメなどが棲息できにくい寒冷帯の海でも生き抜く術を彼らに与えたということではないのだろうか。
  • 温度刺激による心血管の反応と、これを支配する交感神経系の反応は統一的ではなく、非均一性地域性反応が惹起される。
  • 一般に体表部と対内部では血流および交感神経活動性の反応が逆方向となる。即ち温刺激では皮膚血流が増加し、皮膚交感神経活動性が抑制されるのに対し、体内部の血流は減少し、内臓・心交感神経活動性は増加する。冷刺激では逆の反応が起こる。
三木成夫の「上陸の形象」「ニワトリの四日目」「内臓循環と体壁循環が不倶戴天の間柄」の項とピタリと照合!
温度馴化機能の高度化が生物種の「寒冷期進化」であり、四季昼夜と(海中と比べ)大きく温度変化する大気中に暮らす動物たちのこの温度馴化の統合機能を「経絡(狭義)」として捉えうること。
非均一性地域性反応こそが、経絡経穴の特異的反応性の根拠となりうること。    
  • 変温・外熱性動物の自律性温度調節系としては現在のところ血管調節のみが存在するものとされており、体温調節における血管調節系のモデルとして有用な可能性をもっている。
経絡(狭義)についての基礎的生理学な研究は、カエルなどの両棲類が最適かもしれないということ。金魚の経絡治療は、奇をてらうものではなかった!のかも知れない。

( 2003/03/25 )


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